リスクがわかる~失敗事例

事業拡大リスクがわかる~失敗事例

企業が存続し、成長するには事業拡大を試みる必要がありますが、非常に大きなリスクが伴うことも事実です。例えば、新規事業の成功率について5%程度というショッキングなデータもあるほど、新規事業や事業拡大のかじ取りは難しいものであり、慎重かつ綿密な対応が求められるものです。

そこで今回の記事では、事業拡大のリスクを見誤ったがために失敗(=大きな損失を招いてしまった)事例について紹介します。これから事業拡大を検討されている企業の経営陣の方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

1.急な拡大路線で失敗!東京の防虫剤製造業者B社の事例

事業拡大リスクがわかる~失敗事例

衣服用防虫剤や使い捨てカイロ、保冷枕など非常に高い商品ブランド力を持つ東京の防虫剤製造業者の事例について紹介します。Bは、企業のトップの判断により積極的な拡大路線を仕掛けたものの、当初想定していたシナジー(相乗)効果が上がらず、結果的に損失が膨らみ、民事再生法を申請する結果に陥ってしまいました。

この事例の教訓としては、事業拡大を行う際にはリスクを想定して慎重さも重要であることと、ワンマン体制の企業では「待った」をかけるスタッフがいるかいないかが非常に重要であるということです。

① 事業拡大時の状況

B社の主力商品である衣服用防虫剤や使い捨てカイロ、保冷枕などの日用品は非常に激しい価格競争に直面していました。他の大手メーカーに押し出される形で赤字に陥っており、一部の事業や製品を他社に譲渡するなどのリストラを行ってはいたものの、立て直しが必要な状況でした。
社長交代により新たに就任した三代目社長は積極的な事業拡大でこの状況を打破しようとしました。

② 事業失敗の主な原因

2000年頃から事業の拡大を試みましたが、思ったほどの相乗効果は得られず、2007年ごろからは子会社の統廃合をせざるを得ない状況になりました。この統廃合の費用負担は、B社の大きな足かせになりました。
取引先など周囲の関係者からは拡大方針を改めるようなアドバイスもありましたが、同族経営色の強いB社内では、社長に反対意見を進言できるスタッフがおらず、風通しが良くなかったことも、失敗の原因として考えられます。

③ 事業拡大に失敗後は?

民事再生法の申請後も、B社の商品のブランド力はに対する評価はいまだ高く、事業譲渡型の再建スキームを利用し、現在、新会社として事業を継続中です。

2.完全な異業種に手を広げ放漫経営で倒産したD社の事例

事業拡大リスクがわかる~失敗事例

D社は主に個人向けのPCデータ復旧事業において、8年連続で業界NO.1の実績を誇るなど、成果を上げている会社でした。特殊な技術を用いて、短納期で仕上げる技術を持っており、大学や旧官庁からの受注も多く、非常に好評を博していました。
ところが、新事業として全く畑違いでノウハウもない高級チョコレートの輸入販売を開始し、同事業に多額の資金を投入したことで結果的に資金繰りが悪化しました。そして、最終的に倒産してしまいました。

この事例からの教訓としては、ノウハウを持たず本業との関連性の少ない業界に参入する際には、特に慎重に業界の市場動向の研究や参入の見極めが重要であるということです。また、予想通りの成果が表れないときに、企業再建に関する知識を持っておくこと、信用できる専門家にアドバイスを求めることも、損害を最小限に食い止めるためには重要なポイントです。

①異業種参入時の状況

チョコレート輸入事業の参入時、データ復旧事業としては順調に軌道に乗っていました。
結果から言えば、新事業の成否の見通しの甘さによって資金繰りの悪化を招いたといえます。

②事業失敗の主な原因

D社の失敗の主な原因は2点あります。
一点目は、言わずもがなですが全くノウハウのないチョコレートの輸入事業を甘い見通しによってスタートし、多額の資金を投入したことです。借入が増加するなかでも東京の一等地に路面店を出店するなど、経営者の新事業への執心も、損額額を増加させました。
二点目は、経営陣が社内改革などで事業の再建が図れる段階にもかかわらず、債権者に対して債権整理開始通知を発送してしまい、信用不安を招いてしまったことです。これは、経営陣の企業再建に関する知識が欠如していたことが大きな要因です。

③結果

結果的に、D社は本業で利益がしっかりと出ていたにもかかわらず、新事業への投資への歯止めがきかず、また事業再建の計画に組み込まれていたチョコレート事業の売却も思うように進まず、規模を大幅に縮小せざるを得ない結果となりました。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか?
事業を拡大するにはリスクを伴うということはよく言われることですが、失敗事例を確認することでよく理解しやすくなるかと思います。

今回の事例では、経営者が独断で性急に事業拡大を進めてしまったがために損害額が膨らんでしまったケースと、本業で利益がきちんと確保できているにもかかわらず全くノウハウのない異業種に参入して失敗してしまったケースを紹介しました。いずれも状況は異なりますが、経営者がかじ取りに失敗してしまったということと、社内にストップをかけられるスタッフがいれば防げた可能性が高いという点ではよく似た事例です。

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